展覧会

杉本博司「クアトロ・ラガッツィ」

2018.10.05|金| - 2018.11.04|日|

概要

Overview

 リニューアル記念特別展「信長とクアトロ・ラガッツィ 桃山の夢と幻」を本年10月5日より11月4日まで開催致します。MOA美術館は、2017年2月5日に杉本博司と榊田倫之の主宰する新素材研究所の建築意匠によってリニューアルしました。そのオープンを記念して、2017年秋にニューヨークのジャパン・ソサエティーで開催した「Hiroshi Sugimoto: Gates of Paradise」展を日本で初公開いたします。「クアトロ・ラガッツィ」とは、1582年にローマ教皇のもとに派遣された4人の天正少年使節のことで、西洋美術史家・若桑みどり著『クアトロ・ラガッツィ』(集英社)の書名に因んでいます。
 本特別展は、「Hiroshi Sugimoto: Gates of Paradise」展の日本巡回と、天正少年使節及び南蛮美術、そして近世日本を切り開いた織田信長に関わる作品を展観し、華やかな桃山時代の文化と美術を概観するものです。

杉本博司:天国の扉-日本と西欧の十字路  

2015年の春、私は生涯の仕事として取り組んできた劇場の撮影のため、ヨーロッパ各地を巡っていた。私はヨーロッパのオペラ劇場の最古の姿を今に留める、アンドレア・パラディオ設計になるテアトロ・オリンピコを訪れた。ヴェネト地方の片田舎ヴィチェンツァにあるこの劇場の内部は、無数のギリシャ風彫像で装飾され、ロビーにも美しいフレスコ画が天井回りに描かれていた。劇場の支配人は私にこのフレスコ画の一面を指差し、この絵は1585年の劇場開館の年に、日本からの使節がローマへの途路、ここに立ち寄って歓迎を受けた場面を描いたものだと説明された。よく見ると日本人らしき4人が最前列に描かれている。私はこの4人が天正遣欧少年使節であることを知った。

俄然、私は少年使節のイタリアでの足跡に興味を覚え、その足取りを探ってみると、リボルノから上陸しピサからフローレンス、シエナを経てローマへ、その後アッシジからベニスへと向かっている。私はローマのパンテオン神殿もピサの斜塔もシエナの大聖堂も撮影している。これらの建物は少年使節が来た時にはすでにあった建物だ。私は偶然にも少年達が見たその建物を私も自分の眼で今見ているのだということに気が付いた。私は遥かな時代の彼方から声を聞いたような気がした。「私達が見たこのヨーロッパの風景を、今一度あなたにも見てもらいたい」という声を。その声は冥界からの声なのか私の心の声なのか、どこかで響き合い、木霊となって聞こえてきた。

私は今まで偶然にも辿った少年使節の足跡に加え、意図的にさらにその足跡を尋ね撮影を続けることにした、偶然が必然をうながしたのだ。400年以上の歳月が過ぎ去った今、どこまで当時の姿が再現できるかは不明だ、しかし私は人気の無い満月の下の深夜のパルテノン、閉館中の城館ヴィラファルネーゼの螺旋階段室、夜明け前のフィレンツェ大聖堂、そして今は博物館に展示されている初期ルネッサンスの名品「天国の扉」を、休館日に人の気配無しに撮影することに成功した。

ローマ法王グレゴリウス13世は、天正少年使節をキリスト生誕時に東方から博士が来訪してキリストを礼拝した秘跡の再来として迎えた。日本人が初めて知る西洋、そして西洋人が初めて知る日本。私の血の中には四百数十年前の双方の驚きが、未整理のままに流れている。

私は私の精神の出自を訪ねて、目視確認の為の旅をまとめ、ここに展覧会としてお披露目する。

杉本博司

Staircase of Villa Farnese  Hiroshi Sugimoto 2016年

 

Pantheon  Hiroshi Sugimoto 2015年 

 

【杉本博司】1948年東京生まれ。立教大学卒業後、1970年に渡米、1974年よりニューヨーク在住。精緻な技術の銀塩写真作品は世界中の美術館に収蔵される。近年は執筆、設計、能、浄瑠璃の演出などに活動の幅を広げる。主な受賞歴は、2009年高松宮殿下記念世界文化賞、2010年紫綬褒章、2013年フランス芸術文化勲章オフィシエ、2014年第一回イサム・ノグチ賞、2017年文化功労者。

 

「信長とクアトロ・ラガッツィ 桃山の夢と幻 杉本博司と天正少年使節が見たヨーロッパ」展覧会ページがコチラ

Facilities