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リニューアル3周年記念特別展 「仁清 金と銀」

2019.11.01|金| - 2019.12.08|日|

概要

Overview

MOA 美術館は、リニューアル3周年記念特別展「仁清 金と銀」を開催します。野々村仁清(生没年不詳)は、正保4年(1647)頃、京都・仁和寺門前に御室窯を開きました。巧みなロクロの技術と華麗な上絵付、優美な造形性によって、仁清のやきものは当時の公家や武家などに愛好されました。 本展覧会では、御室窯における作風の展開をたどりつつ、多岐にわたる作例の中でも特に金や銀を使用した色絵陶器を中心に展観します。また、京極家伝来の色絵茶壺を取り上げ、その図柄と共通する屏風や工芸を併せて展観し、絵画や意匠との関連性を探ります。

 

◆絵画・工芸意匠と仁清 −京極家の茶壺を中心に−

丸亀藩京極家旧蔵の色絵茶壺、水指、釘隠などは、道具帳によって、延宝元年(1673)頃の制作が推測できる貴重な作品群で、そのほとんどが国宝や重要文化財に指定されています。これらの作品を紹介し、仁清の制作技法を考察します。また茶壺の図柄と共通する屏風絵や漆工、小袖なども併せて紹介し、仁清が既存の工芸意匠を参考にしつつ、平面の絵画を立体に表現するためにどのように工夫したかを考察します。

 

国宝 色絵藤花文茶壺 MOA美術館

温かみのある白釉地の上に、咲き盛る藤花が巧みな構図で描かれており、仁清の茶壺の中でも最高傑作として名高い。花穂と蔓は赤や紫・金・銀などで彩られ、緑の葉には一枚一枚葉脈を施している。総体が均等に薄く挽き上げられた端正な姿は、色絵の文様とほどよく調和しており、下部の土見も壺全体のバランスをよく保っている。平らな底の裏に小判形の「仁清」の大印が捺されている。

 

Image: TNM Image Archives

重要文化財 色絵月梅図茶壺 東京国立博物館

豊かな膨らみと裾に向けてすぼまる形が美しい。胴の下部に配された源氏雲の一塊から、上部に太い幹が現れ、右上方に伸びて、枝先に銀彩による月が肩部の耳の間に配されている。反対の面には口をめぐる金雲に一部隠された細い枝が左右に伸びている。京極家の道具長に記載はないが、京極家の家老多賀越中が藩主から拝領したとの伝聞がある。平底の左側に「仁清」の大印が捺されている。

 

重要文化財 色絵吉野山図茶壺 福岡市美術館

京極家に伝来した色絵茶壺の中でも大ぶりでやや胴が長い。ロクロ目はやや荒く、釉際の部分に数本のヘラ目が巡っている。吉野山の表現方法は両面で異なり、一つは金と赤の点描を施した緑の山に、縁取りをした桜花をびっしりと描くもので、反対の面は点描の無い金、赤、青、緑の山並みの上に縁どりの無い金、銀の桜花を表している。底に「仁清」とあるが、印ではなく筋のあるヘラで刻まれている。

 

静嘉堂文庫美術館イメージアーカイブ / DNPartcom

重要文化財 色絵吉野山図茶壺 静嘉堂文庫美術館

京極家伝来の茶壺の中でもやや横に豊かな膨らみを見せる造形である。口縁から裾にかけて白釉をかけ、緑で山並みを表した上に桜花を描く。空に当たる部分にいわゆる仁清黒を巡らし、口周りの金彩による源氏雲を際立たせている。桜花は、金で縁取った赤と赤で縁取った銀との2種で、わずかに青も点じている。腰から下の露胎は赤みをおび、平らな底の中央に「仁清」の大印が捺されている。

 

重要文化財 色絵山寺図茶壺 根津美術館

京極家伝来の茶壺の中でも最も小さく、形は肩衝茶入形で、耳が三つであるのも珍しい。口縁から裾にかけて白釉を施した上に、楼閣のある山の春景を描いており、仁清の色絵茶壺の中でも最も絵画性に富んだ茶壺で、真壺に比べて上下の奥行きが小さい茶入形の形状がこれを可能にしている。山や霞は、刷毛か筆を用いて白泥を丁寧に塗っているのがわかる。底は平底で小判枠に「仁清」の大印が捺されている。

 

Image: TNM Image Archives

重要文化財 色絵牡丹図水指 東京国立博物館

仁清の色絵水指の中で、本作のように棗形の水指がいくつか知られている。これは京極家の御蔵帳『萬御数寄道具御印帳』に記載される「赤絵牡丹水指」に相当する水指である。四方に窓を取り、金銀、赤による牡丹と金雲、緑の歯を全て異なる図柄で表している。窓の周囲は花菱地文を赤、銀、緑で表している。上部は赤地に銀彩で波濤文様を口の周りにめぐらせている。碁笥底の内部に「仁清」の大印が捺されている。

 

◆金、銀、色絵への展開

仁清の御室窯では開窯まもない頃から金彩や色絵陶が製作されたと思われます。初期の色絵は青、水色、赤などの使用に限られましたが、次第により華やかなものへと展開していきました。ここでは、色絵香合と茶碗を中心に、独特の造形美を示す香炉、花生、水指など、白釉の上に緑、紫、黄、赤などの多彩な色絵具や金銀彩を施した作品を紹介します。

 

重要文化財 色絵輪宝羯磨文香炉 藤田美術館

密教法具である輪宝と羯磨とを交互に胴の6方に描いた香炉で、土見せの底に「奉寄進播磨入道仁清作 明暦3年卯月」と刻銘がある。明暦3年(1657)の時点で既に色絵の技法が完成していたことがわかる貴重な資料である。箱の蓋裏に、仁清が陶技の上達を祈願して、京都の安養寺、仁和寺、槇尾山に寄進した香炉のうち、安養寺に寄進したものであることが記されている。

 

重要文化財 色絵瓔珞文花生 仁和寺

仁清が開窯した御室窯と関係の深い仁和寺に伝来した花生で、仁清から仁和寺に献上されたものと考えられている。古銅器の形状にならって、大きく開いた口と蕪形の胴、撥形に開いた高い脚部からなり、胴部には鬼面の耳を左右に付けている。白釉を全体にかけ、脚部の釉切れは、高低のある垂れ幕状に装飾的に仕上げている。色絵は胴部を中心に、蝶や卍をあしらった瓔珞文を表している。

 

静嘉堂文庫美術館イメージアーカイブ / DNPartcom

重要文化財 色絵法螺貝香炉 静嘉堂文庫美術館

古くから軍陣の合図などに使われてきた法螺貝を象った香炉で、仁清による彫塑作品の中でも優品として声価が高い。波紋を色とりどりに表現しており、その華やかさに目がいくが、筋の痩肥の付け方や、うねり方、ねじれ方など、彫塑的な要素は、写実性に富んで、高い完成度を示している。波紋をかたどった煙出しの穴が三つ開いている。皿状の台は縁以外が露胎で、底中央に繭枠の「仁清」印が捺されている。

 

色絵ぶりぶり香合 根津美術館

ぶりぶりとは振振毬杖の略で、鞠を打つ玩具であるが、正月には魔除けの為に室内に飾られた。この香合は、その槌の部分を象っており、六面体として、本来杖を刺し入れる穴は金縁の赤で木瓜形にして少しくぼませている。全体に白釉を施し、松竹、鶴亀を描く他、下方には花菱亀甲文様、端の六角形には宝珠といった吉祥文様を描いている。蓋裏と底の中ほどは土見せで、「仁清」の小印が捺されている。

 

色絵羽子板香合 野村美術館

いくつか知られる羽子板をかたどった仁清の香合のうち、本作品は左義長羽子板を模している。左義長はもともと宮中の行事で、正月15日に竹を三本立てて藁縄を巻き、天皇の書初を入れて焼く厄払いの火祭りである。三毬杖とも書き、民間ではとんど等と呼ばれている。白釉の地に金、赤、緑、青を用いて極めて精緻に絵付けがなされている。底は土見せで、繭形枠の「仁清」印が捺されている。

 

色絵結文香合 湯木美術館

結文を象った香合で、全体に白釉をかけ、結び目の部分にのみ色絵で鹿の子文を表している。格子の内部に点を入れた後、金彩で四角と点を重ねている。内部は結び目部分に香を置く部分があり、蓋、身共に緑釉を塗った後金彩で籠目文を施しているが、身の金彩はほとんど残っていない。底は土見せで、一部透明釉がかかり、火色が斑点状に出ている。印は無い。池田家伝来。

 

色絵おしどり香合 大和文華館

仁清の香合には鳥を象った可愛らしい香合が多く見られる。本作品はおしどりを象っており、くちばしや羽の文様を銹絵で施したのち白釉を掛け、色絵と金彩で精緻に施されている。内部は身、蓋ともに緑釉が施されている。近衛家への献上品と伝えられ、近衛家熙(1667〜1739)の言行を記す『槐記』に、享保17年(1732)11月20日の口切茶会に、仁清のおしどり香合が使用されたことが記されている。

 

重要文化財 色絵金銀菱文重茶碗 MOA美術館

金森宗和の依頼によって東福門院への献上品として制作されたものと伝わる。銀菱文の碗に金菱文の碗が収まる「入れ子」の茶碗で、口縁部は金と赤の彩色で縁取り、見込み全面に仁清独特の漆黒釉を施している。外面には、白釉地を効果的に残しながら、赤で縁取った金・銀の菱繋ぎ文と意匠化された蓮弁文をめぐらし、斬新な装飾に仕立てている。高台内に「仁清」の小判形の小印が捺されている。

 

重要文化財 色絵鱗波文茶碗 北村美術館

胴を少し締め、口縁を抱え込んで山並みを作る器形で、宗和好みといわれる茶碗の一つである。見込みには白濁釉が掛けられ、外側には、意識的に文様的効果を狙い、高台から口縁にかけて緑釉が流し掛けられている。素地の部分には緑と青の上絵を用いて8段の鱗紋が描かれ、さらにその内部にも金彩で鱗文が施されている。片薄に削られた高台内に「仁清」小印が捺されている。三井家伝来。

 

重要美術品 色絵武蔵野図茶碗 根津美術館

満月の下、芒が秋風にそよぐ、いわゆる武蔵野の図が器面一面に描かれる茶碗である。全体に白釉をかけ、月の半円や芒の部分を残して銀彩を施し、透明釉をかけている。芒の葉は青と緑で、穂は赤で上絵付けがなされ、一部口縁を越えて見込みにも穂先や葉が続いている。金属的に輝く銀でなく、夜空を表現するいぶし銀がその効果を発揮している。片薄に削られた高台内に「仁清」の小印が捺されている。

 

◆宗和好みと仁清のかたち

仁清の御室焼の窯は、正保4年(1647)頃、仁和寺門前に開かれたと考えられています。この開窯を推進したのが茶匠金森宗和(1584〜1657)で、彼が死没する明暦2年(1657)まで密接な関わりを持ちました。ここでは、御室焼の初期10年の間に創始されたと考えられる宗和好みの唐物名物形茶入、高麗呉器写茶碗、銹絵の白釉茶碗などを紹介します。また、独創的な形の向付、釉薬の流れに創意を見せる水指や茶碗などを紹介し、仁清の造形の確かさと優れたデザイン性をご覧いただきます。

 

褐釉撫四方茶入 高津古文化会館

筒形にロクロで挽いたのち、四方を小判形に押さえて成形した茶入である。褐色の釉薬を掛け、さらに黒飴釉を一筋流している。『松屋久重他会記』の慶安元年(1648)3月25日条に「宗和切形トテ、トウ四方也、シマノ袋 茶弁当ニ入レル為ト云ヘリ、仁和寺ヤキト也」との記述があり、このような茶入でなかったかと考えられている。底は、右回転の糸切底で繭形枠の「仁清」印が捺されている。

 

瀬戸釉肩衝長茶入 銘存命 野村美術館

非常に背が高く紡錘型の茶入がいくつか知られており、『宗和献立』に記載される「ちや入御室せい高」がこのような茶入であったと推測されている。よく精選された土を用い、鋭い肩をつけて成形している。瀬戸釉を掛け分け、釉上の鶉斑や山形に現れた土見せの火色など、いずれも美しい。背は高いが、内部の底が半分以上のところにある上げ底で安定している。底は、右回転の糸切底で「仁清」の小印が捺されている。

 

静嘉堂文庫美術館イメージアーカイブ / DNPartcom

呉器写茶碗 銘 無一物 静嘉堂文庫美術館

朝鮮半島で焼成された高麗茶碗の中でも「呉器」と呼ばれる茶碗を写したもので、「無一物」と銘がある。すっきりとした椀形の姿に裾に広がる撥形の高台がつき、赤い斑紋が内外にあらわれる。畳付の目あとや高台内の渦状の削りなど、その姿を忠実に再現するが、茶碗を正円とせず一側面を押して平らにした造形など、仁清の独創性が現れている。高台内に「仁清」の幕印を捺している。

 

重要文化財 銹絵水仙文茶碗 天寧寺

宗和とその毋の菩提寺である天寧寺に伝来し、宗和による寄進状が付属するため、仁清と宗和の関わりをよく示している茶碗である。胴を中程で締め、口をやや内側に抱え込んだ姿は古くから宗和好みと呼ばれる。全体にかけられた白濁釉の下に水仙を描くが、銹絵だけでなく白泥も使用して花、茎、葉を描く点が注目に値する。やや小さな高台は、くっきりと削り出され、高台内に「仁清」の小印が捺されている。

 

白釉輪花水指 雪月花 湯木美術館

鉄鉢形の器形に天板をつけ、立ち上げた縁を輪花とした水指である。銹釉を銅の外側と天板に三筋流れるように施し、その上から、天板と内部に白釉を施して、さらに胴の外側に口から流れ落ちたように二筋の白濁釉を施している。「雪月花水指」との名は、白釉を雪に、丸い口を月に、輪花の縁を花に見立てての呼称であろう。底は平底で「仁清」の幕印が捺されている。

 

百合形向付 根津美術館

5客揃いの向付で、三又に切り抜いた粘土板に3枚の花弁を付けることで6弁の百合形を作り、型にはめて成形している。6枚の花弁は、中央に折り目を入れ、先端に呉須を無造作に点じ、やや濃い呉須を重ねている。底の布目や印に釉薬が残っていることから、一度全体に釉薬をかけ、底の部分は拭っているようである。