北斎「冨嶽三十六景」【終了しました】

2014年9月6日(土)~9月24日(水)

【シリーズ全46枚を一挙公開!】

 江戸後期に活躍した絵師、葛飾北斎(1760~1849)は、没後165年を経た今日も、世界的な芸術家として広く知られています。
 北斎は19歳で勝川春章の門に入り、浮世絵を学ぶ一方、狩野派、琳派、住吉派、中国画法、西洋画法など、様々な技法を学び、独自の画風を創出しました。
 「冨嶽三十六景」シリーズは、北斎が70歳を過ぎて制作した風景版画の揃物で、北斎の代表作とも言える作品です。
北斎は本シリーズにおいて、主題である富士を様々な場所や角度から捉え、時間や季節までも描き分けています。
本シリーズの高い芸術性は、モネなどヨーロッパの印象派の画家たちにも大きな影響を与えました。音楽の分野では、フランスの作曲家ドビュッシーが「神奈川沖浪裏」に魅了され、1905年に交響詩「海」のスコアの表紙に北斎画のイメージを採用しています。
 このたび、保存状態が良好で、希少なコレクションとして知られている当館所蔵の「冨嶽三十六景」全46枚を一挙公開し、《三大傑作》《富士山信仰と旅》《表富士と裏富士》《藍摺の魅力》《奇抜な構図の面白さ》《生き生きとした人物描写》などテーマを設け、解説パネルとともに展示致します。
 北斎ならではの大胆な構図や描写などを通して、「冨嶽三十六景」の魅力の一端をご堪能下さい。

主な作品

冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏   葛飾北斎

冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏   葛飾北斎
江戸時代 天保2年(1831)頃

 波の画家・北斎の名を生んだ名作です。逆巻く怒濤がその波裏をみせ、今にも崩れ落ちようとしている下で、必死の力漕をみせる漁船が描かれています。一方で、富士はその浪間から静かに顔をのぞかせています。自然の力と人間、静と動、また奇抜で思い切った構図は、北斎にしてはじめて描き得たものでしょう。

《三大傑作》

《三大傑作》

 「冨嶽三十六景」シリーズの中でも傑作と言われる作品に「神奈川沖浪裏」「凱風快晴」「山下白雨」があり、“三役”と呼ばれています。

《富士山信仰と旅》

《富士山信仰と旅》

 「冨嶽三十六景」シリーズが発売された当時、人々の間で富士山信仰が盛んでした。「諸人登山」には、“江戸の八百八町に八百八講”とうたわれるほど盛行した、富士講の人々の姿が描かれています。本シリーズには他にも、東海道や甲州街道を行き交う旅人の姿が、富士とともに描かれています。

《表富士と裏富士》

《表富士と裏富士》

 「冨嶽三十六景」シリーズは全46枚の揃物です。先に36枚が出版され、人気を得て10枚が追加されたと考えられています。輪郭線が藍摺りの36枚は通称「表富士」、黒摺りの10枚は「裏富士」と言われています。「身延川裏不二」は、深い岩山のかなたに山梨県側から見た裏富士の姿が描かれています。

《藍摺の魅力》

《藍摺の魅力》

 「冨嶽三十六景」シリーズの中には「相州七里濱」、「甲州石班澤」、「常州牛堀」など藍一色の作品が見られます。発色のよい藍色は海外から輸入されたベロ藍を使用したものです。ベロ藍はベルリンで作られた安価な合成化学顔料で、当時大流行しました。

《生き生きとした人物描写》

《生き生きとした人物描写》

 「冨嶽三十六景」シリーズの特色のひとつに、「北斎漫画」をはじめとする挿絵図、絵手本制作を通して鍛えられた、北斎ならではの人物表現の面白さがあげられます。「穏田の水車」には、穀物を運ぶ男性や、米をとぐ女性の姿が生き生きと描かれています。

《奇抜な構図の面白さ》

《奇抜な構図の面白さ》

 「冨嶽三十六景」シリーズは、大胆な透視構図を利用した「江戸日本橋」、画面中央に巨大な桶を描き、桶の中で職人が懸命に働き遠景に富士の姿を表す「尾(び)州(しゅう)不二見原」など、構図に様々な工夫がなされています。
西洋画法などを学んだ北斎ならではの機知に富んだ作品にご注目下さい。