所蔵企画展 江戸の華 肉筆浮世絵 -師宣・春章・歌麿・北斎-【終了しました】

2015年6月19日(金)~7月22日(水)

 江戸時代に入ると、遊里や芝居町などを中心に活気ある町人の文化が開花し、当世の風俗をいきいきと伝える浮世絵からは、町人たちの憧憬や関心をうかがうことができます。
 なかでも絵師が直接筆をとって描いた肉筆浮世絵は、衣裳模様の細密な表現や賦彩の鮮やかさなどに版画とは違った味わいがあり、富裕な町人のみならず大名などの貴顕にも愛好されました。
 本展では、浮世絵の開祖といわれている菱川師宣、肉筆画で浮世絵師中第一級の技量をふるった勝川春章、美人画の名手・喜多川歌麿、風景版画で一世を風靡した葛飾北斎の作品を中心に、重要文化財3件を含む肉筆浮世絵の優品約30点を展観します。

主な作品

見返り美人図 菱川師宣

見返り美人図 菱川師宣
江戸時代 17世紀 

本図は、元禄年間の遊女の姿を描いているが、女性の見返りの姿は、師宣が一人立図や群像の中に好んで描いたスタイルである。賛は、「人知れずおもふ心のくるしさを色に出でてや知らせそめけん」とあり、新後撰和歌集の恋歌である。

江戸風俗図巻  菱川師宣

江戸風俗図巻  菱川師宣
江戸時代 17世紀

本絵巻は、江戸の行楽地を背景に庶民風俗を描いたもので、御殿山の花見の宴、歌舞伎小屋中村座の木戸口と舞台、隅田川の堤、そして吉原遊廓が描かれています。人物を極彩色とし、他の風物を淡彩とした表現は効果を上げており、師宣の優れた感覚が発揮されています。

立美人図 懐月堂度繁

立美人図 懐月堂度繁
江戸時代 18世紀

本図の遊女の小袖に「桐」の文字があるのは、この女性の源氏名を示すものと考えられます。この作品では、美人に手拭を持たせることによって、懐月堂派の類型的な構図に変化を与えています。

柳下腰掛美人図 宮川長春

柳下腰掛美人図 宮川長春
江戸時代 18世紀

長春は、江戸中期の浮世絵師で、肉筆画に専念して版画は作りませんでした。本図は、柳の下で洗髪をくしけずる女性の姿態美を流れるような描線で描き、赤を主とした着物に藍色の帯を配した色彩効果も巧みです。

重要文化財 婦女風俗十二ヶ月図 勝川春章

重要文化財 婦女風俗十二ヶ月図 勝川春章
江戸時代 18世紀

江戸庶民の年中行事を月ごとに描き分けた本作品は、春章の最も脂の乗った天明期(1781~89)の作で、月々の季節感を各図に背景として見事に取り入れています。また、縦長の画面に、数人の婦女子と楼舎、調度、花卉などを巧みに描き込んだ構図の美しさや精緻な描写も、肉筆画における春章の優れた力量を見せています。とりわけ美人の衣裳に見られる細密な描写と色彩には、春章の非凡な手腕が発揮されています。「12月節分図」には「旭朗井勝春章画」の落款と、「酉爾」の朱文方印が捺されています。肥前平戸藩主松浦家伝来。

重要文化財 雪月花図 勝川春章

重要文化財 雪月花図 勝川春章
江戸時代 18世紀

雪月花の三幅対をそれぞれ清少納言・紫式部・小野小町という王朝の三才媛の見立絵とし、これを当世市井の婦女風俗に描きかえています。春章は、天明年間に貴顕・富豪の求めに応じて肉筆美人画に専念したと言われ、この三幅対も同時期の作と思われます。

寒泉浴図 喜多川歌麿

寒泉浴図 喜多川歌麿
江戸時代 寛政11年(1799)頃

本図は、歌麿の最晩年の肉筆画で、風呂桶等の写実的な描写に対し、肌の柔軟さや襟足の優美な描写の対照が、歌麿ならではの女性美を描き出しています。賛は、蘭湯(らんとう)にひたる漢の女官昭儀の故事をうたったもので、鶯谷史垣とは大田南畝(おおたなんぽ)のこと。

桟橋二美人図

桟橋二美人図
江戸時代 寛政10年(1798)頃

歌麿は、寛政年間(1789~1801)に美人大首絵を発表して独自の美人画を完成したが、肉筆美人画にも多くの傑作を遺しました。本図は、寛政十年(1798)頃の作と考えられ、舟着場の深川芸者と仲居を描いています。女性の姿態、衣裳の模様の表現、舟着場の背景描写には歌麿の円熟した技術がみられます。

重要文化財 二美人図 葛飾北斎

重要文化財 二美人図 葛飾北斎
江戸時代 19世紀初期

北斎の美人画の中でも、人物の細面で柔和な表情と流暢で無駄のない描線、落ち着いた色彩などから、北斎画歴前半期の代表的な美人画といえます。
 立姿の花魁に坐姿の女芸者を配し、顔の表情や衣裳文様に北斎一流の手腕が見られます。
 落款および「亀毛蛇足」の朱文長方印より、寛政年間(1789~1801)末から文化年間(1804~18)初めの頃、北斎40歳代の作品とされます。

鵜飼図 葛飾北斎

鵜飼図 葛飾北斎
江戸時代 19世紀初期

本図は、松明をかかげて鵜飼をする緊張した一瞬をとらえたもので、鵜匠の隙のない動作がよく表現され、顔には北斎特有の飄々とした表情が表われています。人物や舟などの丹念な表現と、水流や松明の炎の水墨画的な技法とが、効果的な対比をつくり出しています。

納涼図 歌川豊広

納涼図 歌川豊広
江戸時代 18世紀

豊広は歌川豊春を祖とする歌川派の絵師で、広重の師として知られています。本図は、川風に涼む若い男女が螢狩りを楽しむ納涼図です。若い男の動きのある姿態は写実的であり、薄物による淡い感じの女性美もまたよく表現しています。