所蔵企画展 近代風景版画の巨匠 吉田博【終了しました】

2015年4月17日(金)~5月13日(水)

 吉田博(1876~1950)は、明治・大正・昭和を通じて文展や帝展で活躍した洋画家で、水彩画、油彩画、木版画に優れた作品を残しました。自然への深い愛情と畏敬の念を持ちつづけ、“自然と人間との間に立って、見能わざる人の為に、自然の美を表わして見せる”ことを画家の使命とした博の作品は、殆どが風景画で占められ、その取材範囲は日本のみならず欧米、アジアと世界各国に及んでいます。
 この度の展覧会は、吉田博の木版画にスポットをあて、その魅力を紹介するものです。日本の伝統的な浮世絵の高度な木版画技術を受け継ぎながら、西洋画の視点を取り入れた作品は、独自のものとして海外でも高く評価されています。木版画とは思えない程、写実的で精緻、しかも抒情性をもった作品の数々を、この機会にご堪能下さい。

主な作品

レニア山 吉田博

レニア山 吉田博
大正14年(1925)

吉田博は、風景版画の中でも、特に山岳、河川を愛した作家です。その作品は、いずれも静けさに包まれ、厳しい写実の画面に静寂な空気が満ちています。本図のレニヤ山は北米ワシントン州の死火山で、標高4392メートル。州の最高峰です。

みどころ① 【多様な技法による、新たな木版画】

みどころ① 【多様な技法による、新たな木版画】

 吉田博は大正9年(1920)に新版画運動を進めていた渡辺木版画店より、初めての木版画を出版しました。その後、大正12年(1923)の3度目の欧米旅行をきっかけに、時代に合った新しい木版画の創造を決意し、帰国後の大正14年(1925)より、彫師、摺師を自らの意図のもとに監修、統括する制作に切り替え、木版画制作に打ち込みました。
 博の版画の特色として、平均30版以上といわれる多色刷り、細部での亜鉛凸版の使用、大判木版画などがあげられます。なかでも帆船シリーズに代表される、同じ版木を用いて色を替えて刷ることによって、時間や気候の変化を表した同版色替の技法は大きな特色のひとつです。

みどころ② 【海外風景】

みどころ② 【海外風景】

 吉田博は、明治32年(1899)、描きためた水彩画を携えて渡米し、ボストンなどで水彩画展を開催して成功を収めたのを皮切りに、3度の欧米旅行をはじめ、インド、東南アジア、中国、韓国など世界各国に赴きました。本展では、大正14年(1925)に初めて博の監修により制作された木版画“アメリカの部”6点の中より、「グランド・キャニオン」「ナイヤガラ瀑布」「レニア山」。“ヨーロッパの部”11点の中より「ヴェニスの運河」「マタホルン山」、他にも海外に取材した作品の数々を展観します。

みどころ③ 【大自然の描写―山岳風景と水の表現】

みどころ③ 【大自然の描写―山岳風景と水の表現】

 博は、自然崇拝の精神に基き、“自然の中に自らを没し、「仙骨」になりきることで真の風景が描ける”という信念をもち、制作に励みました。山を愛した博は、30歳頃からは毎年夏になると日本アルプスに数カ月も籠もり画題を探し求めたほどで、昭和11年(1936)には日本山岳画協会を結成しました。高山の魅せる一瞬の美を捉えた博の山岳風景は、多くの登山愛好家を魅了させます。また、「水を描かせたら吉田博の右に出るものはない」と言われた卓抜な水の表現など、博の風景画はいずれも圧倒的な臨場感が画面を覆い、見るものに迫ります。