使用した素材について

屋久杉、行者杉、黒漆喰、畳など日本の伝統的な素材を用いつつ、展示される作品の美を最大限に生かす展示空間を創出しています。

 

 

メインロビー

初島や伊豆大島が浮かぶ相模灘を一望でき、遠くは房総半島から三浦半島、伊豆半島まで180度の大パノラマが楽しめます。
2018年の改修工事では、メインロビーの天井部分を全て改修し、天井高を開口部へ近づくにつれ少しずつ下げることで、より開放感あふれる空間となりました。
床面は大理石の一種である寒水石、壁面にはインド砂岩が用いられています。

黒漆喰

展示室には、ガラスケースへの写り込みを防ぐために鑑賞者の背後に長さ17メートル、高さ4メートルの壁が立てられました。
単調な黒ではなく、質感をもたせるために黒漆喰が用いられ、作業をした職人の手跡も魅力の一つとなっています。
見切りには島桑が用いられ、壁と床の境目には壁の下部を保護するために瓦幅木がめぐらされています。

メインエントランス ドア

正面玄関入り口には、日本の伝統工芸で国内外からのお客様を迎えようと、漆芸家で人間国宝の室瀬和美氏が制作した高さ4メートルの漆塗りの扉を設けました。
ステンレスに布着せを行ったのち乾漆粉で質感を表現したもので、日本産の漆を使用しています。
赤と黒の美しいコントラストは、杉本博司氏の提案によるもので、桃山時代に流行した「片身替」(小袖の半身ずつに意匠の異なる文様や色彩のことなった生地を用いたもの)をイメージしたものです。扉内側の左右下部には、室瀬和美氏と杉本博司氏のサインがそれぞれ記されています。

 

行者杉

展示ケースは、収蔵品がより美しく見えるよう床の間をイメージして制作しました。
框には、樹齢数百年経つ大分県の行者杉を用い、共木で8mほどある木をかぎ継ぎでつないでいます。
正面は動きのある板目で、天面は目の詰んだ柾目と美しい表情を見せています。作品が置かれる天板は、麻縁の畳風になっています。保存科学上、ケース内にイグサを使用することができないため、和紙畳を用いています。

階段ホールの縦桟

柔らかな自然光が漏れる木曽檜の縦格子。

樹齢1500年以上の屋久杉

奥行きが1.8メートルあるゆったりした空間の展示ケースには屋久杉が使用されています。
屋久杉は鹿児島県屋久島に自生する杉で、現在は伐採が禁止されています。木目が細かく複雑なため装飾用に珍重されている木材です。
本ケースの天板の屋久杉の幅は1.3メートルあり、樹齢1500年以上と推定されます。

 

天平古材

日本美術が本来鑑賞されていたような空間に作品を展示するため、大床風のガラスのない露出展示空間を設けました。
框には、野性味のある木目が美しい樹齢1000年の貴重な屋久杉を用い、両脇の柱には、向かって右に奈良の海龍王寺(創建8世紀前半)、左に當麻寺(創建 伝612年)の天平古材と呼ばれる古い材木が使用されています。壁は聚楽土を塗り込めた土壁となっています。

東大寺の瓦を焼く奈良の鬼師の手による瓦

展示室入り口のブリッジには、露地の空間に見立てて敷き瓦を配しています。
唐招提寺や東大寺などの修復をしている鬼師と呼ばれる奈良の瓦職人に注文したものです。小さな窯で焼くため、焼成された色味がそれぞれ微妙に異なり、工業製品とは違う均質ではない面白さがあります。
瓦を斜めにして床に配する四半敷きという敷き方で、ブリッジの端に瓦の角がきれいに合うように寸法を決めて作成しています。完璧な割付によって生じる緊張感と、瓦を焼く手仕事の柔らかさが共存しています。

the café 小松石のカウンター

the caféのカウンターには、近隣の神奈川県真鶴町一帯の海岸で産出する小松石を用いました。
江戸城の普請にも使われた石で、茶銹が美しいため庭園に景石として置かれることも多く、研磨すると淡い緑がかった灰色の輝く石肌があらわれます。
小松石のカウンターとリン酸処理鋼板や黒皮鉄板、仙徳風メッキ鋼板の壁、黒の花崗岩の床が空間の趣きをつくり出しています。

 

the shop

the shopで使用している商品台はカナダ檜を使用しており、その一枚板の天板に、イギリスのガードレールの部材を脚にしました。展示室と同様に新素材研究所のデザインによるものです。美術館オリジナルグッズをはじめ、人間国宝の作家による限定品など、様々な商品をそろえております。

 
 

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