志野一文字香合
データ
時代 | 桃山時代(16世紀) |
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素材・技法 | |
サイズ | 一合 総高2.4㎝ 径6.3㎝ |
解説
桃山時代、天正年間(1573~92)から文禄・慶長年間(1592~1615)にかけて、現在の岐阜県土岐、可児(かに)の二郡に散在する美濃の窯では、志野、黄瀬戸、織部などの、優れた香合が焼かれた。なかでも志野の一文字といわれる香合は、作行きが優れていることで声価が高いものである。この平らな円形の器は、室町時代以来、中国から輸入された堆朱(ついしゅ)や青貝などの香合に見られ、そうした唐物(からもの)漆器の香合を倣(なら)ったものと思われる。印籠蓋(いんろうぶた)形式にした香合で、身・蓋の合わせ口を除くほぼ全面に長石釉がかかっている。蓋表に蝶のような文様を、鉄絵具で絵付けした優雅な作行きで、側面から高台にかけての釉肌には志野独特の火色が鮮やかに現れている。高台はきわめて低く、比較的大きく丸い。浅く削り込まれた高台内に、置き台の跡が輪形に残っている。志野の一文字の香合の中でも、見どころが多い優れた香合である。