重要文化財
山水人物蒔絵手箱
データ
時代 | 鎌倉時代(14世紀) |
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素材・技法 | |
サイズ | 一合 縦27.7㎝ 横34.3㎝ 総高21.5㎝ |
解説
長方形・角丸の合口造りで、口縁に錫縁をめぐらし、身の側面に金銅製の松竹透かし彫り紐金具を打つ。甲盛りと胴張りがあり、大型で量感のある形態で、内部に大小二枚の懸子(かけご)を納める。蓋表の文様は上流から急流を下る筏流を描き、近景の水面には柴舟二隻、鵜飼舟、蛇籠(じゃかご)が見られる。蓋鬘(ふたかずら)と身の四側面は文様が連続して描かれ、網を担いで橋を渡る人物、柴舟と水車、水上には楓の葉が散らされている。蓋裏は、遠景の山々には松を点じ、空中には小禽の群れを散らし、近景の流水と土坡(どは)には、柳、楓、松を配し、岸辺に蛇籠を置き、浅瀬には二羽の鷺を描いている。 総体に梨地とし、岩は高蒔絵に切金(きりかね)を置き、樹幹や鵜飼舟、柴舟、人物、塀は薄肉の高蒔絵で、樹木の葉や柴などは付け描きである。遠山、土坡、流水は研出(とぎだし)蒔絵で、山・土坡の周縁部は青金の蒔暈(まきぼか)しを用いている。蓋裏・懸子は梨地に金の研出蒔絵で表し、ところどころに蒔暈しを用いる。形態は、鎌倉時代の大型の手箱の特色を留め、技法的には高蒔絵、研出蒔絵、付け描きなどの各種技法を併用した複雑な表現である。また、図様的には人々の営みが生き生きと描かれ、土坡に樹木・鳥などを配した伝統的な意匠に蛇籠などの名所絵的な景物を描き込み、新しい時代の視点がみられ、その制作時期は鎌倉時代末期から南北朝時代に至る十四世紀の作例と考えたい。益田家伝来。