重要文化財

花唐草七曜卍花クルス文螺鈿箱

データ

時代 桃山時代(16世紀)
素材・技法
サイズ 一合 縦41.0㎝ 横31.2㎝ 総高11.8㎝

解説

合口造り長方形の、足のついた黒漆塗りの箱で、蓋と身の四隅を二ミリほど低くして黄漆を塗り、唐戸面(からとめん)と呼ぶ洒脱な作りにしている。蓋表の文様は中央に花唐草を配して周囲を三重の境界線で囲み、その間に、七曜文帯、卍 (まんじ)文と花クルス文を交互に配した文様帯を入れている。文様は貝殻片を切り抜いて施した螺鈿で表されており、真珠光が黒漆に映えて美しい。工作技術が見事であり、漆塗りの調子も丁寧で、わが国の作とみて間違いない。しかし、蓋表中央に数花を相称形に配置した花唐草文様は、李朝の螺鈿に見られる様式であり、葉と蔓の曲線表現には南蛮風も加わっている。花クルス文は、おそらく切支丹の影響だろう。足付きの器形には、中国趣味が窺われる。この作品に以上のような異種の工芸様式が混在して見られるが、それは、大陸の文物や南蛮・切支丹の影響が強くおよんだ桃山時代の製作になるものゆえであろう。

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