名品展 国宝「紅白梅図屏風」

名品展 国宝「紅白梅図屏風」の画像

概要

MOA美術館のコレクションは、創立者・岡田茂吉(1882 ~ 1955)が蒐集した日本・中国をはじめとする東洋美術を中心に構成されています。その内容は、絵画、書跡、彫刻、工芸等、多岐にわたり、各時代の美術文化を語る上で欠くことの出来ない作品を含んでいます。
本展では、「紅白梅図屏風」をはじめ京焼の大成者・野々村仁清作「色絵藤花文茶壺」、三大手鑑の一つとして著名な手鑑「翰墨城」の国宝3件の同時公開に加え、コレクションの各ジャンルを代表する名品を精選して展観します。梅花咲き誇る早春、隣接する瑞雲郷梅園とともにぜひご鑑賞ください。

みどころ

国宝3件を同時公開

隣接する瑞雲郷梅園の見ごろにあわせ、国宝「紅白梅図屏風」を含むMOA 美術館を代表する国宝3件を同時公開します。

 

 

国宝 紅白梅図屏風 尾形光琳 江戸時代(18世紀)

国宝 紅白梅図屏風
尾形光琳 江戸時代(18世紀)
尾形光琳は「風神雷神図屏風」で有名な俵屋宗達の作品を身近に接し、その感化を受けながら、独自の画風を築き上げたと言われています。水流を伴う紅梅・白梅の画題や二曲一双の左右に画材をおさめる構成のやり方がそれです。後に光琳梅として愛好される花びらを線書きしない梅花の描き方や蕾の配列、樹の幹にみられるたらし込み、更に他に類を見ない筆さばきをみせる水の文様など、優れた要素が結集しています。

 

国宝 色絵藤花文茶壺 野々村仁清 江戸時代(17世紀)

国宝 色絵藤花文茶壺
野々村仁清 江戸時代(17世紀)
京焼の祖といわれる野々村仁清の代表作が色絵の茶壺です。本作は仁清の茶壺の中でも最高の傑作として名高く、京風文化の象徴的作品ともいえます。温かみのある白釉地の上に、咲き盛る藤の花が巧みな構図で描かれており、花と蔓は赤や紫・金・銀などで彩られています。バランスのとれた端正な姿は、色絵の文様とよく調和しています。

 

国宝 手鑑「翰墨城」 奈良~室町時代(8~15世紀)

国宝 手鑑「翰墨城」
奈良~室町時代(8~15世紀)
厚紙の表裏に奈良時代から室町時代までの宸翰(天皇の書)、能筆の書など合計311葉の古筆切を貼り込んだ折帖です。表紙に付された「翰墨城」の題が烏丸光広(1579~1638)の筆と目されることから、江戸時代初期の編纂と考えられています。本作は古筆鑑定を代々の生業とした古筆別家13代・古筆了仲(1820~1891)に伝わり、のちに近代を代表する茶人・益田鈍翁(1847~1938)が旧蔵しました。

 

展示構成

※展示内容は予告なく変更される場合があります。

和様の書と蒔絵の意匠

平安時代は、宮廷を中心に貴族文化が爛熟して和様の美を作り上げました。なかでも平安後期は王朝時代とも称されて、「調度手本」として美麗な装飾経、冊子や巻物が制作されました。10世紀ごろには藤原行成ら能書により和様の書が成立し、工芸技術の粋を尽くした料紙装飾とともに宮廷の室礼を彩りました。
蒔絵調度では、宮廷の生活を彩る調度として完成された和様の意匠が完成しました。宮廷貴族の暮らしから生まれた王朝の美は後の時代にも受け継がれ、鎌倉時代には日本的な風景や和歌の意匠をもつ作品が制作されています。

おもな展示作品

石山切 伝藤原公任(国宝「翰墨城」所収)

石山切 伝藤原公任(国宝「翰墨城」所収)

西本願寺伝来「伊勢集」の断簡で、弾力的で太く細く、リズミカルに料紙の上を走る筆跡の古筆切です。料紙は波模様の唐紙に蝶、鳥に草木を散らし、右方に破り継ぎがあり、料紙装飾の粋が凝らされています。


重要文化財 山水人物蒔絵手箱 鎌倉時代(14世紀)

重要文化財 山水人物蒔絵手箱
鎌倉時代(14世紀)

大型で量感のあるかたちに、梨地(金粉を蒔いた地)に高蒔絵、研出蒔絵、付け描きなどの蒔絵の各種技法を併用して図様をあしらった鎌倉時代の手箱です。四側面から蓋の表裏に至るまで、土坡に樹木、鳥などを配した伝統的な意匠に蛇籠などの名所絵的な景物が全面に描かれています。景観の中には手綱を担ぐ漁夫、米俵を運ぶ牛と農夫なども描き込まれ、人々の営みまで生き生きと描写されています。


大聖武 伝聖武天皇(国宝「翰墨城」所収)

重要美術品 波千鳥蒔絵硯箱 室町時代(16世紀)

日本絵画

MOA美術館のコレクション中の一角を占めるのが、国宝「紅白梅図屏風」を含む中世から近世に至るまでの絵画作品です。ここでは、鎌倉時代に王朝の美の系譜を継ぎ、宮廷貴族たちの間で流行した「似絵」から、江戸時代初期に制作された風俗画に至るまで、絵画史の片鱗を知ることのできる名品をご紹介いたします。

おもな展示作品

重要文化財 源重之像 上畳本三十六歌仙切 鎌倉時代(13世紀)

重要文化財 源重之像 上畳本三十六歌仙切
鎌倉時代(13世紀)

平安時代の歌人36人に、それぞれの詠んだ和歌を添えた「歌仙絵」の一つで、もとは絵巻物仕立てであったものの断簡(だんかん)です。歌人がみな上畳(貴人専用の畳)に坐す姿で描かれているところから、上畳本と称されています。鎌倉時代の似絵(にせえ)の名手の作品と考えられ、「佐竹本」に並び現存最古の歌仙絵と言われています。


重要文化財 湯女図 江戸時代(17世紀)

重要文化財 湯女図
江戸時代(17世紀)

京や江戸で元和・寛永年間(1615~44)に流行した湯屋で働く六人の湯女を描いた作品。華麗な衣裳を身にまとった湯女たちの風俗と生活を生き生きと描写しています。近世の日本絵画において庶民の風俗生活が主要な画題の一つになり、祭礼などの群衆描写から少人数の群像、やがて一人立ちの人物像が生まれるまでの過渡期を物語る作品と考えられます。

仏教美術

わが国の仏教美術は、中国大陸や朝鮮半島から多大な影響を受けながら独自の発展をしました。とくに平安前期(9世紀)には、空海以後の密教の展開に伴って教理の表現としての絵画、彫刻が生み出されました。法具等の造形美術、平安時代後期から鎌倉時代にかけては、末法思想の流行による浄土教美術の興隆や、武士の気風に合った禅宗文化など、時代の信仰とともに多彩な表現が花開きました。

おもな展示作品

重要文化財 聖観音立像
奈良時代(8世紀)

重要文化財 北方天眷属像
鎌倉時代 文永4年(1267)

近代美術

時代の大転換期となった明治時代には、大きな後ろ盾であった諸大名や公家等の主要なパトロンが衰退し、日本美術を取り巻く状況も激変する中、伝統的な美術・工芸を次世代に伝える機運が高まりました。明治から昭和初期には帝室(皇室)による美術工芸作家の顕彰制度として帝室技芸員が設けられました。絵画では橋本雅邦、竹内栖鳳、工芸では白山松哉、平櫛田中等が選定され、それぞれの分野において優れた技を発揮し、美術・工芸の継承発展に寄与しました。

おもな展示作品

翠竹野雀 竹内栖鳳
昭和8 ~ 9年(1933 ~ 1934)頃

板谷波山 葆光彩磁和合文様花瓶
1910 年代後半

 

 

【同時開催】
傘寿記念 人間国宝・藤沼 昇 竹工展
2026年1月30日(金)〜3月25日(水)