展覧会

歌麿とその時代  浮世絵黄金期の輝き

2018.08.31(金) - 2018.10.02(火)

概要

企画展 清朝の陶磁器

 

江戸時代後期、庶民の大衆芸術であった浮世絵がめざましく発展しました。寛政期(1789〜1801年)には「美人画」を代表する絵師、喜多川歌麿が登場します。上半身をクローズアップして描く「美人大首絵」を確立した歌麿は、女性の仕草や表情を繊細に描写するだけでなく、色香や内面までも見事に表現して美人画の第一人者と謳われました。また同時期には、勝川春章や鳥文斎栄之、東洲斎写楽らが活躍し、浮世絵は最盛期をむかえました。
本展では、歌麿をはじめ、天明・寛政期から文化・文政期に活躍した絵師たちの肉筆美人画や錦絵を展観し、江戸町人文化の賑わいとともに花開いた黄金期の浮世絵の魅力を紹介します。

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◆見どころ

1.浮世絵黄金期の人気絵師による作品を一堂に展示

 MOA美術館が所蔵する肉筆美人画の傑作の中から、女性の姿態、衣裳模様の表現等に円熟した技術をみせる歌麿の「桟橋二美人図」をはじめ、春章、栄之、豊国等の希少な美人画を紹介します。また、版画についても清長、歌麿、写楽等、人気絵師たちによる浮世絵黄金期の名品を選りすぐり展示します。

桟橋二美人図 喜多川歌麿 絹本著色  江戸時代 寛政10年(1798)頃

 

2.歌麿美人大首絵の代表作 

浮世絵版画の黄金時代である寛政年間(1789~1800)、歌麿は、女性の上半身や顔を画面一杯に構図する新様式の「美人大首絵」を発表しました。この試みは,従来の美人画を一変させるほどの人気を博し、歌麿の声価も高まりました。この度、「美人大首絵」創始期の作品で、背景を雲母摺とした早い作例の「婦女人相十品 文読美人」等を展示します。

 

婦女人相十品 文読美人 喜多川歌麿 大判綿絵  江戸時代 寛政3~4年(1791~92)頃 

 

3.世界に二点しかない写楽作品を公開

東洲斎写楽は、寛政6年(1794)5月から翌年1月までの10ヵ月間に約140種の役者絵・相撲絵を版行したのち、忽然と姿を消した謎の絵師です。このたび展示する写楽の相撲絵「大童山土俵入」三枚続きは世界でも当館のものと、他にもう一点しか所在が確認されていない貴重な作品。1987年にボストン美術館の所蔵品の中から、この相撲絵の版木が見つかったという報道もあり、注目を集めました。大童山は、数え年8歳で、身長1メートル20センチ、体重80キログラムあまりあったという怪童で、寛政6年11月江戸両国の回向院での勧進相撲に7歳で登場し、土俵入りだけを演じた江戸っ子の人気ものでした。本図には、控え力士中に谷風、雷電など有名な力士も描かれています。

大童山土俵入      東洲斎写楽 大判綿絵  江戸時代 18世紀

 

4.重要文化財の肉筆浮世絵「雪月花図」、「婦女風俗十二ヶ月図」を一堂に展観

肉筆浮世絵の重要文化財は10点にも満たないものですが、そのうちの2点が勝川春章の作品で、どちらも当館蔵です。勝川春章(1726~92)は江戸中期の浮世絵師で、勝川派の祖。肉筆画の技量は浮世絵師中、第一級と賞されています。「雪月花図」三幅対は、平安王朝の三才媛の見立絵とし、これを当世市井の婦女風俗に描き替えています。向かって左の幅は、清少納言を武家の奥方風の女性として描き、中央の幅は、武家の娘風の女性を『源氏物語』の作者紫式部に見立てています。また、向かって右の幅は、小野小町を芸者として描いています。それぞれ江戸好みの髪型や衣裳の美しさが見事にとらえられています。
「婦女風俗十二ヶ月図」は、月々の季節感や行事を各図に背景として取り入れた作品で、美人の衣裳に見られる細密な描写と色彩には非凡な手腕が発揮されています。春章の最も脂の乗った天明期(1781~89)の作です。

重要文化財 雪月花図       勝川 春章 絹本著色  江戸時代 18世紀