展覧会
歌川広重 東海道五十三次
2020.03.20(金) - 2020.04.08(水)
概要
◆展覧会概要◆
江戸時代、徳川幕府によって整備が進められた街道のうち、江戸と京都を結ぶ東海道は、参勤交代の大名行列や寺社巡礼の旅人などが往来し賑わいました。特に江戸時代後期、旅が庶民にとって身近になり、『東海道名所図会』などの地誌や紀行文の盛行、滑稽本『東海道中膝栗毛』の大ヒットなどを背景に旅への関心が高まりました。
天保4年(1833)、版元保永堂から刊行された歌川広重(1797〜1858)の「東海道五十三次」は大人気を博し、広重を浮世絵風景画家の第一人者に押し上げました。本シリーズは日本橋から京師(京都)にいたる東海道を宿場ごとに描いたもので、街道風景や旅人の様子を細かく描写するとともに、四季の変化や晴、雨、雪、霧、風などの気象の変化、時刻の変化等を巧みに画面に取り入れ、臨場感をもって深い旅情を表し、江戸庶民の旅への憧れをかきたてました。
本展では、広重の抒情的な風景版画の魅力をご紹介いたします。
保永堂版 東海道五十三次全55枚を一挙公開
東海道五十三次は、53カ所の宿場と首尾の日本橋と京師を含んだ55枚からなります。各地の名所・名物や伝承などとともに、四季の移り変わり、風雨雲霧などの気象が織りなす自然美、そして朝・昼・夕・夜と刻々と変化する時間の表現を織り交ぜて描き出し、全体として抑揚のある作品構成になっています。本展では2年ぶりに全55枚を一堂に展示します。
保永堂版 東海道五十三次之内 日本橋 朝之景 江戸時代 天保4~5年(1833~34)
保永堂版 東海道五十三次之内 箱根 湖水圖 江戸時代 天保4~5年(1833~34)
保永堂版 東海道五十三次之内 三島 朝霧 江戸時代 天保4~5年(1833~34)
保永堂版 東海道五十三次之内 蒲原 夜之雪 江戸時代 天保4~5年(1833~34)
保永堂版 東海道五十三次之内 御油 旅人留女 江戸時代 天保4~5年(1833~34)
保永堂版 東海道五十三次之内 四日市 三重川 江戸時代 天保4~5年(1833~34)
保永堂版 東海道五十三次之内 庄野 白雨 江戸時代 天保4~5年(1833~34)
広重の肉筆浮世絵
広重は版画だけではなく、直接筆で描いた肉筆浮世絵も多数残しています。特に天童藩主織田氏の申し出を受けて制作した作品は、「天童物」と呼ばれ有名です。本展では天童物の中から、富士を望む名所の犬目峠の春と、日本奇橋の猿橋の秋を描いた「犬目峠春景図・猿橋冬景図」、海の眺望の美しい洲崎の朝景と高輪の夜景を対比させた「東都洲崎朝景図・東都高輪夜景図」を展示します。
犬目峠春景図・猿橋冬景図 江戸時代 19世紀
広重が描く桜
広重は、「東海道五十三次」によって一躍脚光を浴びましたが、その他にも「木曽海道六十九次」など街道沿いの名所や、「名所江戸百景」などの江戸を描いた作品、「六十余州名所図会」など他郷の由緒ある地域をモチーフとする名所絵を描いています。本展では、江戸時代に隆興した王子の飛鳥山や品川の御殿山などでの花見の様子や、春の風景を取り上げます。大判3枚続絵の「飛鳥山花見之図」そして、晩年の大作「六十余州名所図絵」、最晩年の名所絵集大成である「名所江戸百景」から選りすぐりの桜の風景を、当館に咲き誇る200本の桜と共にお楽しみください。
飛鳥山花見図 江戸時代 安政2年(1855)
名所江戸百景 隅田川水神の森真崎 江戸時代 安政3~5年(1856~58)