展覧会

開催予定

吉田博 今と昔の風景

2024.11.29(金) - 2025.01.21(火)

概要

吉田博(1876-1950)は、明治から昭和にかけて、水彩画、油彩画、木版画の分野で西洋画壇を牽引した画家として知られています。49 歳にして初めて自身の監修による木版画の作品を発表し、西洋の写実的な表現と日本の伝統的な木版画技法を統合した新しい木版画の創造をめざしました。
本展では、山岳を愛した博が自然に没入する中で生まれた作品約70点を紹介するとともに、現在の風景写真も対比して展示します。
また博による独創的な技術で表現された作品の魅力をオリジナル映像で紹介します。

みどころ 


1 今と昔の風景を展示! 

博が描いた作品の場所を、当館スタッフが独自に取材し、撮影しました。空気までも描いたといわれる博の作品とともに、現在の風景を映像や写真パネルで比較展示します。

「雲海 鳳凰山」 昭和3年(1928)

鳳凰山山頂より

2 世界の風景に取材した吉田博の代表的な木版画作品を展示! 

初めての私家版木版画「米国シリーズ」や、刻一刻と変化する海を捉えた「瀬戸内海集 帆船」など代表作品を展示します。

「米国シリーズ レニヤ山」 大正14年(1925)

「米国シリーズ グランドキャニオン」 大正14年(1925)

「瀬戸内海集  帆船 朝」 大正15年(1926)

「瀬戸内海集  帆船 夜」 大正15年(1926)

3 高精細画像を使用したオリジナル映像を投影! 

博の木版画は、他に類をみない摺の多さが特徴の一つです。平均30回、多い時は100回近く摺を重ねることで、
豊かな色彩を生み出し、博が実際に体感した自然の質感や立体感、空気感を表現しています。

88度摺を重ねた「東京拾二題 亀井戸」 昭和2年(1927)

96度摺を重ねた「陽明門」 昭和12年(1937)

吉田博について


吉田博(1876–1950)は、久留米藩士・上田束の次男として、 久留米市に生まれました。18 歳で上京して小山正太郎 (1857-1916)の主催する画塾・不同舎に入門し、本格的な画業を開始しています。明治 32 年(1899)、23 歳の時、描き溜めた水彩画を携え、 1か月分の生活費のみを持って、後輩・中川八郎とともに決死の渡米を行いました。この時、デトロイト美術館等での展示即売会の大成功によって資金を得て、ヨーロッパも巡って 2 年後に帰国しています。さらに 2 年半後には、のちに夫人となる義妹ふじをと共に再び渡米し、3年以上をアメリカ、 ヨーロッパで過ごしました。これらの外遊によって古今の西洋美術に触れると共に大いに画技を磨き、日本最初の洋画団体である太平洋画会の中心人物として活躍しました。大正 9 年(1920)、44 歳の時、版元渡邊庄三郎との出会いにより、初めての木版画「明治神宮の神苑」を出版しました。 当初は版画の下絵を制作する程度でしたが、関東大震災後、 被災した太平洋画会会員の作品販売を目的に渡米した際、米国で日本の版画が大変な評判であることを知り、自ら習得した西洋の写実的な表現と日本の伝統を生かした新しい木版画創造の必要性を実感するに至りました。帰国した大正 14 年 (1925)、49 歳の時、初めて自ら監修した木版画の作品を発表し、その後の後半生は油彩画と並行し木版画の制作に情熱を傾けました。