重要文化財
白衣観音図
データ
作者 | 吉山明兆 |
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時代 | 室町時代 応永32年(1425) |
素材・技法 | 紙本墨画淡彩 一幅 |
サイズ | 94.7×35.8㎝ |
解説
明兆(1352~1431)は、字(あざな)を吉山といい応永年間(1394~1428)を中心に活躍し、多くの禅宗仏画、水墨画を描いた。本図のように渓流に臨む岩上に静かに坐る白衣観音の姿は、五山の喧噪の中にあって本来の座禅三昧の生活を望んでいた禅宗系統の掛幅として多く描かれている。彼特有の肥痩の激しい線で衣紋を表し、立ち上がる雲煙には隈(くま)を施し、岩組の皴(しゅん)法も疎(あら)い筆致でまとめており、点苔(てんたい)も大きく力強い。特に陰影法を用いることは当時の新画様であって、宋元画からの影響と考えられる。きめの細かい構成、ゆっくり引かれた墨線、淡く美しい色彩などに明兆の本領が発揮されている。本図には、「破草鞋印」の白文方印とともに、画面右下に「行年七十四明兆筆」の款があるところから、明兆の基準作として貴重である。