巡礼図
データ
時代 | 江戸時代 寛文8年(1668)頃 |
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素材・技法 | 紙本著色 一幅 |
サイズ | 37.6×18.8㎝ |
解説
巡礼がまとった帷子(かたびら)に「寛文八年伏見町 戊申(つちのえさる)(1668)六月吉日勝山」と記してあることから、当時の吉原の名妓、勝山太夫であることがわかる。勝山は、信心深く、親の菩提を弔うため、巡礼したという話が伝えられているが、首にかけた納札に「奉納親父(秩父)三十四ケ所巡礼」とあり、勝山の郷里八王子に近い、秩父三十四カ所の霊場巡拝に旅立つ姿を描いたものと思われる。この勝山は、吉原京町二丁目の山本勘右衛門抱えの遊女で、井原西鶴の文中にも喧伝され、また、勝山髷、勝山歩、勝山鼻緒など、当時流行の風俗を創始している。本図の勝山の表情は、繊細に描かれ、衣裳の配色も落ち着いた調子で、作者の並々ならぬ技量を感じさせる。江戸時代初期の寛文美人で、モデルのわかるものはほかにほとんどなく、また制作年代がほぼ察せられるなどの点で貴重である。