本阿弥切
データ
作者 | 伝 小野道風 |
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時代 | 平安時代(12世紀初期) |
素材・技法 | 彩箋墨書 一幅 |
サイズ | 16.7×15.2㎝ |
解説
『古今和歌集』巻第十「物名(もののな)」の断簡で、題詞を高く和歌を低く書写している。本阿弥切は、本阿弥光悦(1558~1637)が愛蔵していたところから、その名がある。もとは天地16センチの小柄な巻子本で、巻第十、第十一、第十二、第十四、第十六、第十七、第十八の約七巻分が現存している。このうち、光悦旧蔵といわれるのは、巻第十と第十一の後半四十七首を継いだ一巻と巻第十四のほぼ全部にあたる一巻の、二巻分である。この二巻は、もと益田家に所蔵されていたが、巻第十と第十一を継いだ一巻は、戦後に分割され諸家に分蔵された。料紙は、藍・白・茶などの具引きを施した染紙に、雲母(きら)で雲鶴・夾竹桃・唐草・蓮唐草などの型文様を摺った唐紙を用い、各巻ごとに一種類の料紙を用いているという特色がある。この断簡は、藍地に雲鶴の型文様を雲母で摺り出した唐紙を用い、小粒で円みを帯びた字形が、力強い筆勢で書写されている。
からはき よみひとしらす よしもき
うつせみのからはきことにとまれゝとたまのゆくへもみぬそかなしき かはなくさ きよはらのふかやふ
むはたまのゆめになにかはなくさまむうつゝにたにもあかぬ心を
さかりこけ
花のいろはたゝ人さかりこけれとも返々そ露はそめける
にかたけ
いのちとてつゆをた(の)むにかけたけれはものわひし
らになくのへのむし
かはたけ
さよふけてなかはたけゆくひさかたの月
ふきかへせあきの山風
わらひ
けふりたちもゆともみえぬくさのはを
たれかわらひとなつけそめけむ