この神奈川沖浪裏は、このシリーズのなかでも出色のもので、遠近法を用いて、立体的な量感をこれほど盛り上げているものはない。西洋画風の藍の濃淡による陰影法が用いられているが、それが日本古来の波頭表現と一体となり、見事な装飾的効果をあげ、力強い画面を作り上げているほか、藍と白との鮮麗な対比がよく生きている。