井戸茶碗 銘 翁

データ

時代 朝鮮時代(16世紀)
素材・技法
サイズ 一口 高9.0㎝ 口径14.5㎝  高台径5.7㎝

解説

井戸茶碗は、高麗茶碗の中でも筆頭にあげられる茶碗である。雑器として焼かれたものであるが、わが国の茶人によって取りあげられ、茶の湯の世界で重用された。寸法、形、釉の色などにより、大井戸・小井戸・青井戸・小貫入(かんにゅう)などと大まかに分類されるが、この茶碗は、大井戸に属する堂々とした深い大振りの茶碗で、鉄分の強い粗めの土で焼かれ、肌に轆轤(ろくろ)目が目立ち、枇杷(びわ)色を呈している。外開きに立ち上げた内面の見込みには、中央に渦状の轆轤目が残っている。内外にかかった釉はかなり薄く、青みを帯びた地釉の中に、鹿の子斑が散在し、寂びた釉景を見せている。高台の梅花皮(かいらぎ)は生じていないが、腰の下回りに目跡(めあと)があり、素地が現れ変化を見せている。大井戸の中ではきわめて釉がかりが薄く、物寂びた姿を翁に見立てての銘であると思われ、上品にして優美なる茶碗であるといえる。益田鈍翁の遺愛品で、蓋表に金泥(きんでい)字形で、右に「翁」、左に「井戸」と記された内箱が添っている。『大正名器鑑』所載。

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