越前大甕 「元亨三年九月廿九日」銘
データ
時代 | 鎌倉時代 元亨三年(一三二三) |
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素材・技法 | |
サイズ | 一口 高六〇・一㎝ 口径五二・〇㎝ 胴径六五・一㎝ 底径二四・〇㎝ |
解説
越前焼は、福井県丹生(にう)郡織田町平等(たいら)および宮崎村熊谷を中心として生産された焼きもので、鎌倉時代の大甕は常滑(とこなめ)の大甕と近似している。しかし、鎌倉時代後期に入ると、土の相違と肩に施された窯印の違い以外に、口縁部の作りに違いが見られるようになってくる。この時期の常滑の大甕では口縁の折り返しの幅が広くなるが、耐火温度が高い陶土を用いた越前焼では、それがN字状に垂れ下がることなく、この甕のように細い口縁が維持されるのである。この甕は、肩に釘彫りで「元亨三年九月廿九日」の紀年銘が入れられており、鎌倉時代末期の貴重な基準資料とされている。越前特有の、鉄分の多い砂質粘土を用いた素地で、幅広く粘土紐を巻き上げ、段積みで成形している。口縁の折り返し幅が狭く、肩の張りが強いのが特色で、常滑に比べて越前の粘土は耐火温度が高いため、鎌倉期特有の張りのある姿を維持しているものが多い。肩の別面に七条の縦筋を引いた窯印が入れられ、「いろはにほ」の仮名文字と草花風の文様などが刻まれている。