重要文化財
鳥牡丹彩絵曲物笥
データ
時代 | 平安時代前期(9~10世紀) |
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素材・技法 | 木造彩色 一合 |
サイズ | 総高44.9㎝ 径23.1㎝ |
解説
印籠蓋(いんろうぶた)造りの檜(ひのき)の曲物である。身は檜の薄板の内側に細かく刀痕を入れて曲げ、箍(たが)で締め、さらに外側に薄板で包んで桜皮の樺止(かばど)めにしている。釘も糊も用いない、古くは正倉院御物に見られる古代曲物技法を伝える平安時代の遺作である。蓋表には二羽の尾長鳥を、身には牡丹に雀を木地に直接彩色で描き、彩絵の上に油を塗布したとみられる。現在、肉眼では見えにくいが、赤外線写真によると手馴れた筆致による彩絵がきわめて優れ、優雅な趣きにあふれていることがよくわかる。彩絵の木製容器としては、古いものでは、正倉院御物のいわゆる獣物箱などにその例があるが、いずれも指物造りである。彩絵のある曲物造りで、完好なものとなると、この笥などは、最も古い遺品といえる。京都教王護国寺(東寺)伝来で、同寺の記録中「白銅水瓶」(図版第218参照)の記載に「有木筒」とあるのが、これにあたるといわれている。