重要美術品

錫杖頭

データ

時代 奈良時代(8世紀)
素材・技法 鉄造 一枝
サイズ 高18.5㎝

解説

錫杖は、修行者が山野遊行の際に、地を突き、振り鳴らし、猛獣毒蛇などから身を守るために携行したもので、また、托鉢のときにはこれを鳴らして来意を告げるためにも用いられ、仏具として広く流布したものである。この錫杖頭は、鉄を鍛造して形作ったもので、円錐形の主軸に、張りのあるハート形の輪を作り、下方で反転させて、その先を二つに分けて蕨手状とし、頂部を主軸の頂上と同様、捻りを加えてストゥーパ(塔)の九輪に形作っている。主軸は鉄板を巻いて鍛接したもので、目釘穴が下部にあり、下から長い柄を差し込むようになっている。形姿は単純だが、力強い造形性を示しており、形式・製作技術ともに古式にみえる。古式の鉄錫杖としては、正倉院蔵の錫杖をはじめ、勝道上人所用と伝えられる日光輪王寺蔵の錫杖、近年男体山より発見された錫杖などが知られる。これらと比較すると、形式や技法などは非常に近く、製作期は奈良時代と考えられる。

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