五鈷鈴

データ

時代 平安時代(9世紀)
素材・技法 銅造鍍金 一口
サイズ 高22.0㎝

解説

五鈷鈴は、鈴に付した柄の形式によって独鈷鈴(どっこれい)、三鈷鈴、九鈷鈴、宝珠鈴、塔鈴などと称される金剛鈴の一種で、その音色によって諸尊を驚覚し歓喜させる密教法具である。この五鈷鈴は金銅製で、長さ五・四センチの舌(ぜつ)がついているが、鐶座を欠いている。鈴体は、肩が張り、腰がすぼまり、裾が広がる古様な姿で、三条ずつ三組の条帯を刻するほか文様はない。把部の装飾は、四個の大きい鬼目(きもく)を中心に構成されている。鬼目は直径2.6センチあり、横長の枠取りの中に六弁の花文風のものを鋳出した異形のもので、その上下に、二条のくくり目で留めた力強い単弁の八葉蓮弁文がめぐらされている。五鈷は、独鈷の四方に脇鈷をつけた形をとる。中央の鈷は八角とし、鋒をきわめて鋭くして匙面を作り、周辺の四鈷の先端は中央の鈷よりやや下に位置し、鋭い弧を描く爪をもつ。総体に素朴な古様を呈しており、遺例の少ないわが国初期の密教法具として貴重なものである。

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