重要文化財
聖観音菩薩立像
データ
時代 | 奈良時代(8世紀) |
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素材・技法 | 木造(白檀造)金彩 一躯 |
サイズ | 総高102.8㎝ 像高89.2㎝ |
解説
観音は、元来阿弥陀如来の脇侍であったが、後に三十三の姿に変化することが説かれるようになって、その基本的な姿を聖観音と呼ぶようになった。聖観音像は、若干の例外もあるが、宝冠中に阿弥陀如来の化仏(けぶつ)を戴くのを定型としている。この像は頭部に三面宝冠をつけて立つ菩薩像で、宝冠正面の龕中に如来坐像が表されており、左手に蓮華の蕾を持ち、右手の先は首から下がった瓔珞(ようらく)を執る。頭頂部から台座までを一木から彫り出す技法で制作された檀像で、ほぼ直立しているが、腰には少し動きが見られる。量感ある体躯の表現、衣や宝飾の緻密な彫り出しの技法には、大きさの違いはあるが、法隆寺の九面観音像(中国・唐時代)にも窺える盛唐様式の影響が見られる。しかし面相や体部の表現などは、柔らかく穏やかなものとなっており、そこに仏像彫刻における日本的特色を見ることができよう。こうした特色から、この像は奈良から平安時代にかけて制作された檀像彫刻における八世紀の作例と見ることができ、延暦寺伝来の伝承とともに貴重な観音像である。