芍薬摺絵古今集和歌巻
データ
作者 | 本阿弥光悦 |
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時代 | 桃山~江戸時代(17世紀) |
素材・技法 | 紙本金銀泥絵墨書 |
サイズ | 33.6×890.8cm |
解説
光悦は、版木による型文様を施した料紙をとりわけ愛用し、竹・、梅・秋草・蝶など、大胆な図柄を用いた遺品がいくつか残っており、慶長10年(1605)の『隆達節巻物』にも用いられている。たっぷり墨を含んで、濃淡の変化をくっきりと書き分ける光悦の筆法は、平安朝の古筆を丹念に学んだものと思われ、漢字は中国の張即之(ちょうそくし)(1186~1258)の力強い槽書の筆致に影響されているようにうかがえるが、料紙と書風のつりあいをつねに念頭に置いた、斬新で洗練された感覚は他に比類がない。 この巻物は芍薬(しゃくやく)を雲母で摺り出した料紙に『新古今和歌集』の秋歌二十三種を撰して散らし書きしている。下絵は勺薬のみで版数も少なく素朴に配置されていて、ここでは光悦の書風は、後年のものとは趣が異なり、字の肥痩が少ない典雅なものとなっている。金銀泥画や金銀泥版摺りなどの華麗な下絵のある作品に先立つものと考えられる。巻末に「光悦」の蒙体黒印が捺され、紙背には紙継ぎ部分に「紙師宗二」の印が見られる。