展覧会

北斎漫画と冨嶽三十六景

2019.04.19(金) - 2019.05.21(火)

概要

葛飾北斎(1760-1849)は、90歳で没するまでの約70 年間にわたり、狂歌絵本、読本、絵手本、錦絵、肉筆画など様々な分野で活躍しました。その画業は、在世当時からヨーロッパに伝わり、特に「北斎漫画」は、ヨーロッパでジャポニスムがおこるきっかけとなったともいわれています。
天保2年(1831)頃より西村永寿堂から刊行された「冨嶽三十六景」は、当時の富士信仰の盛行を背景に、斬新な構図や西洋から輸入された化学顔料ベロ藍による鮮やかな発色で人気を博しました。「冨嶽三十六景」の作品の中には、「北斎漫画」の人物ポーズや構図等を生かして描かれたと思われる箇所がいくつかみられます。
本展では、その関連性を考察しつつ「冨嶽三十六景」全46図を一挙公開します。

◆展覧会目録はコチラ

冨嶽三十六景 神奈川沖波裏 葛飾北斎

◆みどころ

多種多様な絵手本「北斎漫画」全15編を展示
「冨嶽三十六景」に先駆けて、文化11年(1814)に出版が始まった「北斎漫画」は絵手本といわれる、北斎の門人のための教本でした。一冊完結のつもりでしたが、予想以上の売れ行きで、15編まで刊行されました。人物、建物、山川草木、鳥獣等、描かないものはないほど多くのものが描かれています。思わず笑いを誘うようなおもしろい絵やかわいい絵もあり、北斎の多彩な表現力の妙を紹介します。

 

人物表現
北斎の人物表現は、役者や美人にとどまらず、老若男女、神々や僧侶、文人、和漢古典の登場人物、あるいは庶民の暮らしぶりなどありとあらゆる層に及んでいます。力士等、特定のテーマによる題材を多様なポーズで描くことも試みています。

 

動物
『北斎漫画』には象、馬、犬、鳥や魚など、様々な動物が描かれ、表現も絵尽くし風や図鑑風など多様です。鳥類では、カラス、鶏、雉、雁の群等が描かれ、それらが、「冨嶽三十六景」や肉筆画にも活かされています。軍鶏、雉等は肉筆画の主題にも取り上げられています。

 

「冨嶽三十六景」全46図を一挙公開
「冨嶽三十六景」は、さまざまな気象、季節、視点などから富士を捉え、その異なる山容の表情を表現しようとしたもので、全46図からなります。全図が揃うコレクションは希少とされています。本展では、「凱風快晴」「神奈川沖浪裏」「山下白雨」をはじめ所蔵する「冨嶽三十六景」全46図を展観します。摺りの風合や細部の表現までご鑑賞ください。

冨嶽三十六景 山下白雨 葛飾北斎

 

冨嶽三十六景に生かされた北斎漫画
「北斎漫画」に描かれたものと同じような図が「冨嶽三十六景」にも使われています。「北斎漫画」の多種多様な図は、「冨嶽三十六景」の中でより進化した形で表されています。

冨嶽三十六景 東海道程ヶ谷

 

北斎漫画 初編

馬に乗った旅人がほとんど同じ図様で描かれ東海道を歩いています。

 

冨嶽三十六景 東都駿台

 

北斎漫画 十一編

天秤棒を担ぐ男性が「東都駿台」では同じ姿で冨士を眺めています。

 

 

冨嶽三十六景 駿州江尻

 

北斎漫画 十二編

強風に懐紙や傘を飛ばされ着物が風になびく姿が同様に「駿州江尻」の強風の中の旅人として表されています。