展覧会

大蒔絵展 漆と金の千年物語

2022.04.01(金) - 2022.05.08(日)

概要

漆で絵を描き、金粉や銀粉を蒔きつけて文様をあらわす「蒔絵」は、日本文化において長きにわたり理想美の象徴であり続けています。
本展覧会はMOA美術館、三井記念美術館、徳川美術館の3館が共同で開催するもので、平安時代から現代の漆芸家作品にいたるまで、3会場で国宝・重文あわせて70点以上の名品を通して蒔絵の全貌に迫ります。
MOA美術館では、国宝「初音蒔絵調度」(徳川美術館蔵)をはじめ、平安時代の和様意匠の完成を示す国宝「澤千鳥螺鈿蒔絵小唐櫃」(高野山金剛峯寺蔵)、鎌倉時代の手箱、琳派様式の蒔絵といった各時代を代表する名品に、現代の人間国宝を加えた選りすぐりの蒔絵を展観します。

さらに国宝「源氏物語絵巻」(徳川美術館蔵)をはじめとした物語絵巻や屛風、仏教経典や書跡なども展観し、日本人が追求した美の系譜をたどります。

 

第1章 源氏物語絵巻と王朝の美

平安時代、宮廷を中心とした貴族文化が爛熟して純日本的な美の規範が生まれました。国宝「源氏物語絵巻」は紫式部の『源氏物語』を絵画化した作品で、貴族の私的な生活の場に設置された調度類の具体的な様相を伝えています。また、小野道風、藤原佐理、藤原行成ら三蹟の時代に和様の書が完成し、豪華な金銀の素材を用いた料紙装飾によって美麗な冊子や巻物が制作されました。本章では、国宝「源氏物語絵巻」を中心に、王朝の美を示す絵巻や書の優品をご覧いただきます。

国宝 源氏物語絵巻 宿木一(絵) 平安時代 12世紀 徳川美術館
展示期間:5月1日~5月8日

重文 継色紙 伝 小野道風 平安時代 10-11世紀 MOA美術館
後期展示

 

第2章 神々と仏の荘厳

贅のかぎりを尽くした蒔絵の調度の中には、神社の創建や造替、その他特別な祈願の際に奉納され、御神宝として伝わったものがあります。また、仏教では、貴重な経典を納める経箱や仏具類を納める箱等が蒔絵によって飾り立てられました。本章では、神社や仏閣に受け継がれる蒔絵作品の数々をご紹介します。

国宝 澤千鳥螺鈿蒔絵小唐櫃 平安時代 12世紀 高野山金剛峯寺 画像提供:高野山霊宝館
後期展示

国宝 海賦蒔絵袈裟箱 平安時代 10世紀 教王護国寺
画像提供:東京国立博物館 Image: TNM Image Archives
後期展示
国宝 梅蒔絵手箱 鎌倉時代 13世紀 三嶋大社
画像提供:東京国立博物館 Image: TNM Image Archives
後期展示

 

第3章 鎌倉の手箱

鎌倉時代は、研出蒔絵、平蒔絵に加えて写実的描写を可能とする高蒔絵が完成し、丸粉の考案によって力強い輝きを放つ金地(金沃懸地)が生まれるなど、多彩な表現が花開きました。また、大型で内容品が付属する手箱の名品が数多く遺されていることも特徴の一つです。本章では鎌倉の手箱の代表作として名高い国宝「浮線綾螺鈿蒔絵手箱」などを展観し、鎌倉時代の蒔絵の様々な表現をご紹介します。

国宝 浮線綾螺鈿蒔絵手箱 鎌倉時代 13世紀 サントリー美術館
前期展示
国宝 浮線綾螺鈿蒔絵手箱(部分

 

第4章 東山文化 ― 蒔絵と文学意匠

室町時代になると、御伽草子や、能、狂言といった文学が庶民に広がり、それとともに文学意匠も盛んに用いられるようになりました。また、この頃の蒔絵技術は、前代の技法を継承しながら、技法の組み合わせによって新しく高度な技法を生み出しました。ここでは、高度な蒔絵技術を駆使して物さびた山々の景色を描く重文「男山蒔絵硯箱」など、文学意匠と関係する東山時代の蒔絵をご紹介します。

重文 男山蒔絵硯箱
室町時代 15世紀 東京国立博物館
Image: TNM Image Archives
後期展示
重美 千鳥波蒔絵硯箱
室町時代 16世紀 MOA美術館
前期展示
重文 砧蒔絵硯箱
室町時代 16世紀 東京国立博物館
Image: TNM Image Archives
前期展示

 

第5章 桃山期の変革 ― 黄金と南蛮

長い戦乱の時代が終わりに向かうと、豊臣秀吉の邸宅、聚楽第をはじめ、各地で屋敷建物の建築が盛んになり、それらを飾る蒔絵の調度品が求められるようになりました。簡易的に蒔絵を施す高台寺蒔絵が流行し、秋草や桐などの大胆なデザインが好まれました。ここでは高台寺蒔絵の名品として名高い重要文化財「秋草蒔絵歌書箪笥」などをご紹介します。

重文 秋草蒔絵歌書箪笥
桃山時代 16世紀 高台寺
前期展示
重文 秋草蒔絵歌書箪笥(部分)

 

第6章 江戸蒔絵の諸相 ―初音の婚礼調度、琳派の美

江戸時代に入ると、徳川幕府を中心に各地の大名が蒔絵を求めるようになり、蒔絵の需要は次第に市井へと広がっていきました。本章では、『源氏物語』をモチーフに豪華絢爛の蒔絵を施した国宝「初音蒔絵婚礼調度」に加え、光悦の蒔絵を模して尾形光琳が制作した重要文化財「住之江蒔絵硯箱」など琳派の蒔絵の名品を展観し、為政者から市井まで幅広く愛好された江戸蒔絵の諸相をご紹介します。

国宝 初音蒔絵貝桶
霊仙院千代姫(尾張徳川家2代光友正室)所用
江戸時代 17世紀 徳川美術館 前期展示
国宝 初音蒔絵貝桶(部分)
国宝 初音蒔絵文台・硯箱
霊仙院千代姫(尾張徳川家2代光友正室)所用
江戸時代 17世紀 徳川美術館 後期展示
重文 樵夫蒔絵硯箱
江戸時代 17世紀 伝本阿弥光悦 MOA美術館 通期展示

 

第7章 近代の蒔絵 ― 伝統様式

近代の漆工芸は、江戸時代の優れた技法を受け継ぎ発展しながらも、明治維新の変革の中で、時代に適応した新たな技法や意匠を生み出しました。ここでは、近代漆工界の第一人者とも評される白山松哉(1853-1923)や、徳川将軍家の御用蒔絵師の系譜を継ぐ川之辺一朝(1831-1910)など、帝室技芸員に任命された漆工芸たちを中心に、近代の蒔絵作品をご紹介します。

海辺蒔絵文台・硯箱のうち硯箱 川之辺一朝 明治時代 19世紀
MOA美術館 通期展示
蒔絵八角菓子器 白山松哉 明治44年(1911) MOA美術館
通期展示

 

第8章 現代の蒔絵 ―人間国宝

戦後、文化財保護法の制定に伴い工芸技術のうち、芸術上・歴史上価値の高い「技」を「重要無形文化財」(人間国宝)として指定しました。本章では、漆芸分野で初の人間国宝として戦後の日本文化を導いた松田権六(1896-1986)をはじめ、現在まで受け継がれる蒔絵の卓越した技をご覧いただけます。

赤とんぼ蒔絵箱 松田権六 昭和44年(1969)
京都国立近代美術館 通期展示
蒔絵螺鈿丸筥「秋奏」 室瀬和美 平成29年(2017)
ポーラ伝統文化振興財団 通期展示

こちらからMOA美術館館長 内田篤呉と人間国宝 室瀬和美の大蒔絵展特別インタビュー動画をご覧いただけます。



 
 

開催情報

 

 展覧会名 大蒔絵展 漆と金の千年物語
会期 2022年4月1日|金| – 5月8日|日|
主催 MOA美術館、三井記念美術館、徳川美術館、朝日新聞社
〔3館共同開催〕※出品作品は会場ごとに異なります。
三井記念美術館:2022年10月1日(土)~11月13日(日)/徳川美術館:2023春
後援 國華社、漆工史学会、公益社団法人日本工芸会
協力 あいおいニッセイ同和損保
開館時間

9:30 ー 16:30*入館は閉館の30分前まで

休館日 毎週木曜日(5月5日|木|を除く)
アクセス 〒413-8511 静岡県熱海市桃山町26-2
JR熱海駅バスターミナル8番乗り場より「MOA美術館行き」約7分
終点「MOA美術館」下車すぐ
お問い合わせ TEL 0557-84-2511(代表電話)

 

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