展覧会

琳派−光悦と光琳

2018.06.08(金) - 2018.07.17(火)

概要

 琳派は、狩野派・土佐派のような家系や師弟関係を中心とした流派とは違い、作風に対する共感などにより、後の作家達に継承されました。江戸時代初期の本阿弥光悦や俵屋宗達らにより始まり、元禄期を中心に、尾形光琳・ 乾山へと発展し、江戸後期の文化・文政期に光琳に傾倒した酒井抱一・鈴木其一がその芸術の再興を志しました。琳派の作品は、屏風や掛幅などの絵画をはじめ、硯箱や着物、扇、印籠、陶器など様々な工芸品に及び、絵画と工芸といった分野にとらわれることなく、斬新で多彩な意匠が創出されました。
 本展では、本阿弥光悦書「花卉摺絵新古今集和歌巻」、尾形光琳筆「草紙洗小町図」、尾形乾山作「銹絵染付梅花散文蓋物」、酒井抱一筆「藤蓮楓図」など、琳派の代表作家における絵画と工芸の優品を展観することで、今なお私たちの生活のなかに生き続ける装飾芸術の粋、琳派の魅力をご紹介します。

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みどころ

1. 光悦・宗達から抱一までの絵画と工芸を展観
琳派の作品に通底する、四季のうつろいや自然の美しさ、金銀はじめ鮮やかな色彩を駆使したかざりの美、絵画と工芸といった分野を越えた斬新な表現などに、多くの日本美術の特徴がみてとれます。本展では、重要文化財 伝本阿弥光悦作「樵夫蒔絵硯箱」、尾形光琳「山水・寿老人図団扇」など、所蔵の琳派作品の中でも生活を彩る多彩な作品を展示します。

2. 光悦・宗達の料紙装飾の美
光悦と宗達の代表作に、宗達が金銀泥で下絵を描き光悦が書を施した作品があります。料紙と書の息があった装飾性豊かな作品は琳派作品の源流の一つになっています。本展では、当館所蔵の本阿弥光悦筆、俵屋宗達の金銀泥下絵「鹿下絵新古今集和歌巻」の他、「芍薬摺絵古今和歌巻」をはじめとする版下絵の巻子・断巻や色紙など約10 点を一堂に展観致します。

花卉摺絵新古今集和歌巻 本阿弥光悦  桃山〜江戸時代 17 世紀

3. 技法の継承―たらし込み
宗達は「たらし込み」という技法を創出しました。これは、塗った墨がまだ乾かないうちに、濃度の違う墨を加えることで生じる滲みなどを利用した技法です。墨の濃淡のむらは明暗や陰影を表出し、立体感や質感を生み出しています。たらし込みは、光琳や抱一の作品中にもみられ、琳派独特の技法として継承されました。作家による用法や筆致の違いを見比べてください。

軍鶏図 伝 俵屋宗達 江戸時代 17 世紀

関連イベント
光琳屋敷ガイドツアー(茶室 一白庵の抹茶券付)
日時  :2018年6月23日(土)、24日(日)13:30~14:30
集合場所:MOA美術館2F受付
参加費 :2000円(入館料は別途必要)
定員  :各回20人(先着順・予約可)
申込先 :光琳屋敷ガイドツアー係 0557-84-2531

作品紹介

1. 本阿弥光悦│ほんあみ こうえつ   (1558 - 1637)
刀の鑑定や研ぎなどを業とする本阿弥家に生まれました。工芸家、書家など、様々な顔を持つアーティストで、光悦が後世の日本文化に与えた影響は大きいものがあります。また書の世界では「寛永の三筆」の1 人として知られ、光悦流の祖となっています。能をこよなく愛し、豪商角倉素庵とともに木版活字の美麗な装丁の謡本を刊行しました。元和元年(1615)には徳川家康より洛北鷹峯を拝領し、一族や裕福な町人層らとともに移り住みました。その頃より楽焼をはじめとする茶碗類をつくりはじめたと考えられています。漆芸では、のちに光悦蒔絵と呼ばれる鉛や螺鈿を大胆に使用した独自の作品を創造しました。

重文 樵夫蒔絵硯箱 伝 本阿弥光悦 桃山~江戸時代 17 世紀

 

2. 俵屋宗達│たわらや そうたつ  ( ?- 1640 頃)
宗達は、「俵屋」という絵屋(絵画作品を制作販売する工房)を主催していたと考えられています。大和絵の手法や主題を新たに展開させ、琳派の作風の基礎を作りました。水墨画では、輪郭線を使わない没骨法や墨の滲みなどを利用した「たらし込み」の技法で、独特の画調を作り上げています。大和絵の手法や主題を新たに展開させ、琳派の作風の基礎を作りました。

伊勢物語 西の対 伝 俵屋宗達 江戸時代 17 世紀

 

3. 尾形光琳│おがた こうりん  (1658 - 1716)
京都の高級呉服商「雁金屋」を営む尾形宗謙の次男として生まれました。少・青年期、富裕な家庭環境のもと、父より能や書、絵の手ほどきを受け、狩野派の画法も学びました。また生家にあった光悦や宗達の作品に触れ、その作風を慕って復興を志すようになります。弟、乾山の焼物の絵付や小袖、蒔絵の図案を手がけ、工芸にも優れた作品を残しています。

草紙洗小町図 尾形光琳  江戸時代 18 世紀

 

4. 尾形乾山│おがた けんざん  (1663 - 1743)
光琳の弟で、尾形宗謙の三男。京焼の名工・野々村仁清より陶法を学び、元禄12 年(1699)鳴滝泉谷に開窯、乾山と称しました。乾山は窯名ですが、号としても用いています。正徳2 年(1712)、二条丁子屋町に移り「乾山焼」として、世にもてはやされました。琳派の絵付や、詩歌を表したものなど独特の作品を制作しました。また兄光琳との兄弟合作の陶器も多くあります。

銹絵染付梅花散文蓋物 尾形乾山 江戸時代 18 世紀

 

5. 酒井抱一│さかい ほういつ  (1761 - 1829)

抱一は、姫路城主、酒井忠以の弟として江戸藩邸に生まれ、早くから俳諧や書画に親しみ、狩野派、浮世絵、円山派、土佐派など諸派の画風を学びました。三十七歳で出家してから、とりわけ光琳に傾倒し、文化十二年(1815)光琳の百年忌には遺墨展を開催し、江戸での光琳顕彰に努めました。季節感や雨風などの気象の変化を的確に描き、今日「江戸琳派」と呼ばれる新たな画風を確立しました。花鳥画を得意としながらも、風俗画や仏画、吉祥画や俳画など様々な主題を描いています。

藤蓮楓図 酒井抱一 江戸時代 19 世紀