北斎 冨嶽三十六景 Digital Remix 作品解説
作品解説 索引
■北斎「冨嶽三十六景」Digital Remix
■その他のコレクション
展示室2
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扶桑十二ケ月
富田渓仙
 
日本の月々の季節感を画題にもり込んだ短冊絵で、溪仙独特の軽妙な筆致と豊かな色彩による詩情漂う作品である。吉野山の桜、淀城の月、高雄の紅葉など名勝の選定に、全国各地を旅行した溪仙の豊富な見聞知識がうかがえる。
23
富士の巻狩
菱田春草 明治35年(1902)
 
富士が見える裾野での巻狩(獣を四方から取り巻き、追いつめて捕える狩猟方法)の風景を描いた作品である。弓をかまえて、松の木陰から駈け出た狩人達と、逃げる獣には軽快な動きが感じられる。その遠景のなだらかな山並を鮮やかな薄青色で描き、山野の空気や光線をも表出させようとした試みがうかがえる。清らかな色彩と瀟洒な表現が交錯し、春草独特の情趣をかもし出している。
24
鯉魚
菱田春草 明治40年(1907)
 
遊泳する鯉(こい)と藻という伝統的な画題を扱った作品である。水中をゆったりと遊泳する鯉の生態がよく捉(とら)えられており、頭から胴にかけての曲線、目玉や鱗(うろこ)の表現などは春草の写実力の確かさを感じさせる。
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瀟湘夜雨
横山大観 昭和23年(1948)
 
本図は、水墨画の好画題、瀟湘八景のひとつで、墨の濃淡による大気の表現や、その奥行の深い構図に、水墨画の新方向をめざした大観の技量が感じられる。昭和23年(1948)33回院展の出品作である。
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鵜飼
川合玉堂 昭和17年(1942)頃
 
長良川の鵜飼は玉堂が多く扱った画題の一つである。舟の篝火が川面に映り、前景の生い茂る木の墨色が、いっそう夜の情感を深めている。3艘の舟が中洲を挟んで川を下る様を、篝火の煙の流れによって動的に表現している。
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西遊記
前田青邨 昭和2年(1927)
 
青邨の代表的作品の1つである。空間を充分に生かした大和絵風の白描(はくびょう)による絵巻で、練達した筆致による的確な線や、墨色の濃淡により、感情、動き、奥行きを遺憾なく表現した、青邨の描写(びょうしゃ)力、素描(そびょう)力の非凡さを示す作品である。
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潮沙去来
竹内栖鳳 昭和5年(1930)
 
波をみせる海を大きく表し、近景には2艘(そう)の舟の舳先(へさき)と小さく漁師、鳥を描いている。大自然と人々の暮らしを対照的に描く、栖鳳ならではの手法がみえる。
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翠竹野雀
竹内栖鳳
昭和8~9年(1933~1934)頃
 
風に揺れる竹に一羽の雀が舞う一瞬を軽妙なタッチであらわしている。大きく斜めに2本の竹を大胆な構図で色彩鮮やかに描いている。「栖鳳作於湯泉村荘」と落款にみえ、晩年神奈川県・湯河原で作画にあたっていた頃の作品である。
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波と燕
竹内栖鳳 昭和9年(1934)頃
 
波頭が勢いよくあがり、燕がそれに驚くように中空を舞っている。波しぶきの白、海の青、燕の黒が、鮮やかな色味で響きあっている。自然と、そこに暮らす野鳥のやり取りが動感たっぷりに表現されている。
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蓮に蛙
竹内栖鳳 昭和2年(1927)
 
蓮の葉が鮮やかな色彩を放つ池の中で、1匹の蛙が水面を泳いでいる。栖鳳は四季の草花を自庭に植え、季節ごとの表情を楽しんでいたという。蓮もその一つで「実に上品な、柔らかいよい色彩」だと気に入っていた。